純ジャパの僕が10ヵ国語を話せた世界一シンプルな外国語勉強法 秋山燿平 [語学関連書籍]

こんにちは!

今回は、東大卒、留学経験・海外滞在経験なしで10カ国語を話すことのできる秋山燿平さんの著書「純ジャパの僕が10ヵ国語を話せた世界一シンプルな外国語勉強法」を紹介したいと思います。

 

犬かき単語

秋山さんの外国語勉強法の中心にある考えは「とにかく、よく使う単語・表現のみを覚えて、どんどん使う」ということです。

この本ではこのよく使う単語・表現を「犬かきの単語」として説明しています。

よく使われるこの犬かき単語200語と表現30個だけを覚えて、あとはそれをどんどん使っていきましょうということです。

ここで言う「表現」とは、例えば「〜したい」英語だと”want to”などに当たります。

SLAからの視点

おそらく秋山さんはSLAについては学んでいないと思うのですが(少なくとも公表はされていません)、ここで一度SLAの視点からこの勉強法を見てみたいと思います。

アウトプット

他の記事でも紹介していますが、SLAにはOutput Hypothesis(アウトプット仮説)という仮説があります。SLA研究者のSwainという人が立てたものですが、カナダのイマージョンプログラムで外国語(英語・フランス語)を学んだあと、外国語を聴いたり読んだりして理解する能力はネイティブの同年代と同じくらいのレベルに達したが、話したり書いたりする能力はネイティブと比べ劣っていたと発表しています。このことから言語習得には聴いたり読んだりするインプットだけではなく自分で話したり書いたりする、いわゆるアウトプットも必要なのではないかという仮説が生まれました(Swain, 1995)。

アウトプットするためにはもちろん頭にその言語のデータベースがないとできないわけですから、最低限のインプットは必要だと思います。その最低限のインプットを秋山さんはこの犬かき表現にとどめているということですね。

スピーキングのプロセス

他の記事でも紹介していますが、スピーキングは①言いたいこと(概念)を決める②概念を言語化する③言語化したものを口で発音する というプロセスを踏みます(Levelt, 1989)。

外国語を話せるようになるには②と③の訓練がとにかく必要です。日本の英語教育ではこの②と③を練習する機会が圧倒的に足りていないと思います。

それはさておき、秋山さんのモデルは限られた単語・表現を使い(アウトプットし)、とにかく頭の中でこの②と③の回路を何度も使うということです。これはとても効果的だと思います。SLAの研究者Paul Nationによると、流暢さの発達(Fluency Development)には、すでに知っている単語や表現を使い、かつ注意が「意味(内容)」に向いている場合に促されると主張しています(Nation, 2007など)。秋山さんの方法は、限られた単語・表現をとにかく何度も使うということなので、この流暢さを鍛えるという意味でも理にかなっているということですね。

白井恭弘氏のインプット=インターアクションモデル

別の記事で白井恭弘先生の著書を紹介していますが、その中に出てくるインプット=インターアクションモデルというのがこの秋山さんの方法に似ていると思います。

外国語学習の科学 白井恭弘 [語学関連書籍]

2018.03.17

インプット=インターアクションモデルではインターアクション、つまり誰かと会話すること(外国語を使うこと)に重点が置かれています。よく使われる表現や構文の入ったダイアログを暗記し、会話を通してその表現をどんどん使っていくという方法です。この方法を使って三ヶ月で15分間会話をできるようになるみたいです。

 

以上のことから、SLAの観点から見ても秋山さんの勉強方法は効果的と言えるのではないかと思います。

Polyglotの学習法

Polyglotという言葉を聞いたことはありますか?Polyglotというのは多言語話者を指すのですが、その何人かが本を出版しています。

僕がまともに読んだことのあるのは以下の2冊です。


How to Speak Any Language Fluently: Fun, stimulating and effective methods to help anyone learn languages faster


Fluent Forever: How to Learn Any Language Fast and Never Forget It

両方の本で、単語を覚える時に自分と関連付ける重要性を説いています。

反対に自分がいつ使うかわからないような単語のリストを頑張っても仕方がないということです。

2冊目の著者の例で分かりやすかった例が、パイナップルという単語を覚えようとしても、多くの人にとってはパイナップルはただのランダムなフルーツの一つでしかないのでバナナやメロンを覚えるのと同じくらい大変になります。しかし、もしあなたがパイナップルが嫌いだとしたら「私はパイナップルが嫌いです」というふうに自分ごと化できるわけです。そうやって自分ごと化することにより、覚えやすさが格段にあがるというわけです。

今回紹介している秋山さんの方法でも、必ず使う単語・表現を覚えるため、この自分ごと化が容易にできます。そうなると覚えやすくもなるというわけですね。


外国語学習にとっては一読の価値ありです。

ぜひ読んでみてください。

 

Levelt, W.J.M.(1989) Speaking. From Intention to Articulation. Cambridge, Mass.: The MIT Press

Nation, I. S. P. (2007). The four strands. Innovation in Language Learning and Teaching, 1(1), 1-12.

Swain, M. (1995) Three functions of output in second language learning. In Cook, G. and Seidelhofer, B. (Eds.) Principle and Practice in Applied Linguistics: Studies in Honor of H.G. Widdowson, pp. 125-144. Oxford: Oxford University Press.

 

ライザップイングリッシュ


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